講演 「衛星による遠隔教育」
                                          近藤喜美夫氏(文部省/メディア教育開発センター)

平成12年6月21日 (水) 14時〜16時 通信総合研究所 中会議室 出席者8名

近藤喜美夫氏は、日本の宇宙通信の草分け的な存在で、郵政省入省後通総研、 宇宙開発事業団等に於いて技術試験衛星X型の開発を担当され、衛星利用による 移動体通信の基礎を築かれた。その後、文部省に移られて衛星利用による遠隔教 育システムを研究され、SCS(スペース・コラボレーション・システム)を完成させた。現在、SCSを利 用した大学間衛星ネットワークの研究並びにその利用に御尽力されている。講演では、 SCSに関する興味深いスライドを用意され、その歴史的背景並びに現在の利用状況ま で幅広く講演していただいた。概要は以下の通りである。

1.衛星利用教育交流ネットワークの始まり
1992年、国内では技術試験衛星X型を利用したPARTNERS計画がスタートした。この中で、 アジア地域を中心に6カ国10局による国際間教育交流実験が行われ、衛星利用は少人数 複数局交流に大きな成果を上げた。

2.VSAT大学間ネットワークの構成
その後平成5年、VSATを利用した複数局の大学間ネットワークの研究が始まった。それまでは、 費用対効果を上げるために放送的な利用によるアナログ映像の単方向利用が主流であったが、 教育的な効果を上げるためには、どうしても双方向性の必要があった。衛星利用の大きな 問題の一つであった回線利用については、国際的に映像のディジタル化が進行し、 CCITTのH.261、ISOのMPEG方式等が登場し、ディジタル化の環境が整ってきたため、 費用的にも双方向性の実用化の目処が立った。

3.SCS(スペース・コラボレーション・システム)の完成
これまでの研究成果が実り、平成7年度から本格的にSCSとしてのシステム予算が認められ、 現在に至っている。平成11年3月現在、文部省メディア教育センターをHUB局として93大学、1短大、 14高等専門学校、11大学共同利用機関140カ所にVSATが設置され、双方向ネットワークが構築され、 それぞれの機関で効率的な運用が展開されている。      (渡邊一郎 記)

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