講演  「情報収集衛星の技術と将来動向」
                 (小滝技術士事務所所長/東京電機大・防衛大講師) 小滝國雄氏

平成11年5月12日(水)18時から20時、電気技術開発(株)、出席者20名。

 冷戦さなかの1960年から米国は偵察衛星を使って旧ソ連の弾道ミサイルや潜水 艦・空母など戦略兵器の建設・配備状況に関する情報収集を開始した。63年から8 0年代にかけてキーホールKHシリーズが次々に打ち上げられ、可視光と赤外線によ る地上の映像をもたらした。映像は初期にはフィルムをカプセルに収納してパラ シュートで地上に落下させ回収していたが、後には通信衛星中継でリアルタイムに取 得できた。

 60年代後半から、分解能に制約を課されながらも商業衛星が台頭した。90年に 勃発した湾岸戦争では、商業衛星もイラクの兵力配備情況を検知した。米国は国防総 省のKHや防衛支援計画DSP、ソ連はコスモス監視衛星などにより、戦場と周辺の 監視を行った。

 情報収集衛星は高度が約96〜480キロの低軌道を周回する。搭載するセンサと しては可視光・赤外線の光学カメラ(銀塩およびCCD)、レーダ、電波探知装置、 X線検知器などである。光学センサは地球上の物体の温度分布を計測し、スペクトル 分析することにより、いろいろな目標情報を提供する。これらの情報をもとにして、 ピクセルに分割した放射強度をディジタル的に加工することにより、画像の信号処理 を行う。その手法には、@画像の基本的処理、Aエッジ強調、Bスムージング、Cス ペクトル強調、D座標変換、E映像の比検出、およびF時間差処理がある。

 現代の衛星センサ技術は進歩しているが、分解能を制約する大気の乱れやその他の 外乱があり、フィルタリング技術の確立が課題である。監視衛星の技術動向は、@小 型軽量化、A姿勢制御、B電力供給、C情報処理能力の向上などが挙げられる。あわ せて防衛庁が計画中の情報収集衛星(光学、レーダ各2基)について報道資料に基づ き仕様を紹介した。(小滝國雄 記)

「情報化研究会の活動」へ戻る