講演と見学「加工技術職人芸のデーターベース化」
―現場技術の空洞化対策―
講師 小林秀雄氏
平成13年9月5日 (水) 13:30〜16:00 産業技術総合研究所東センター 出席者9名
人間国宝が他界すると、その芸はこの世から消える。
その様な事は、望ましい事では無い。そのデーターベース化を企画した。現場ノーハウ
はさらに研究しなければデーターベース化できないことが解かり、安心出来る溶接技術
の開発に迄進み、特許も取得した。
溶接の基本は、如何にして大気(N2等)から溶接金属を護るかにある。ガスシールド
溶接では、電極がコントロールされて居るので、ロボットに組み込み易い。
表面にだけ高価な材料を使うクラッド材が多くなったので、異材継手が多い。溶接は、
切欠き部(カイサキ)を作り、何層もの金属で埋め、一体化させる作業である。初層・
中間層・表層の入熱監理・溶け込み過程(気泡監理等)が大事である。被溶接材料に
対して適正な溶接材料、溶接条件を決定することが、技術者としての技(ワザ)だ。
溶接条件に要求される仕様(板圧・カイサキ・耐熱・強度等)がある。溶接技術者は
作業条件を決定し、作業技能者が作業をする。その結果をフィードバックして、溶接
条件の決定ノーハウとして蓄積する。溶接は永い歴史があるので、造船会社・建設会
社は沢山、良いデータを持って居るが、そのデータ量が多すぎて1機関では、とても
出来る仕事では無い。
当研究グループでは複式溶接・マシニングセンタとに条件を絞ってデーターベース化
を計って居る。ロボットが進化して、溶接速度を30cm/min位に上げる為に電流を増やすと、
表面に欠陥が出来る。対策として磁気を利用する事にした。これはある企業と共同研究中
である。目下の所、提示された材料の種類・溶接条件に対して一番大切な複式溶接の
構造・各層に使用する溶接棒・カイサキ・形状が選べる所迄出来て居る。
カイサキの大きさ等に対して、溶接の回数は何回か等計算をしている。ステンレスは割れ
易い材料なので、選択を誤ると破壊に繋がる。溶接棒メーカーは、この様なデータの表示
をして居るが、案外見られて居ない。
モラルを守って事故を起こさない様にして欲しい。失敗事例の公開希望が多い。
(市川英彦 記)