講演 「日本の品質管理活動の近況」
―日本経営品質管理賞を中心にー
保田襄似氏(工学博士、元福井工大教授)
平成15年 4月16日 (水) 14時〜16時 通信総合研究所会議室 出席者12名
保田氏には平成13年6月にも当例会において「日本的品質管理の特徴」と題してQC、
TQCに代表される品質管理について専門的な立場でご講演いただいている。今回はその
内容をベースにさらにTQM手法による総合的品質管理を踏まえた総合的経営を讃える
"経営品質賞"にポイントを当ててご講演頂いた。
品質システムに関する新潮流として3つの視点がある。第一は2000年版ISO9000シリーズ、
第二はシックスシグマ(6σ)、第三はアメリカのマルコム・ボルトリッジ賞(日本経営
品質賞の母体)がある。
1. 2000年版ISO9000シリーズ
94年版ISO9000シリーズは製品の品質管理を基本にした品質保証体系を目的としていたが、
2000年版は、さらに全社的なマネージメントシステムを構築し、顧客満足、継続的な改善
管理サイクルを採り入れた品質保証システムを目指すものである。
2. シックスシグマ(6σ)
従来の品質基準では、3σ(エラー率:約1,000分の1)が標準的であったが、それを6σ
(同:100万分の3.4)まで引き上げた品質管理手法を適用して製品品質のみならず経営品質
にまで言及していく考え方である。
3. 日本経営品質賞
1980年代、双子の赤字(財政赤字、貿易赤字)で深刻化していたアメリカ経済は、日本的な
TQCを徹底的に研究し、経営のあり方を根本的に改革した。
そうした風潮の中で生まれたのが、マルコム・ボルドリッジ国家品質賞、つまり、経営的に
優れた会社(エクセレントカンパニー)に与えられる経営品質賞である。この優れた会社
実現の陰には2000年版ISO9000シリーズ並びにシックスシグマの手法がある。日本経営品質賞
は以上のような背景のもとに誕生したのである。 (渡邊一郎 記)